kuge’s diary

源氏物語を研究している久下からのお知らせです。

久下研究室のHP→http://www.ne.jp/asahi/kuge/h/

私のお宝紹介(7)歌仙絵抄

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 当該『歌仙絵抄』は、拙著『物語絵・歌仙絵を読む』(武蔵野書院)に既に『三十六歌仙歌合画帖』とともに公開してあります。あらためてここに〈平兼盛〉図と〈紀貫之〉図を掲出しておきますのは、別に架蔵する歌仙絵〈紀貫之〉図と比較してもらうためです。

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 代表的な歌仙絵〈紀貫之〉図としては、ご周知の『三十六歌仙絵巻』の一図ですが、その系譜上に『歌仙絵抄』の〈紀貫之〉図や〈斎宮女御徽子〉図がある訳です。

 ところが当図のように掲出歌「桜ちる木の下かぜはさむからで空にしられぬ雪ぞ降ける」が同じでありながら、全く異なる姿態に描かれる図様が一方に存在しています。

 その容態は威風堂々とした面影が一変して、何やら気落ちした貫之が描かれています。晩年の貫之は支援してくれた定方や兼輔を失い、『古今和歌集』選出時の気迫に欠け見劣りするのもやむを得ない状況にあったと言えましょう。