kuge’s diary

源氏物語を研究している久下からのお知らせです。

久下研究室のHP→http://www.ne.jp/asahi/kuge/h/

私のお宝紹介(2)

f:id:kuge-h:20171212165429p:plain

 ここに紹介するのも前回(1)と同じく《斎宮女御徽子》図ですが、図柄は全く異なります。几帳の陰に横になっているのが女御ですが、その頭部がわずかに見えているだけです。この図柄で最もよく知られているのは、斎宮歴史博物館蔵の住吉具慶筆《斎宮女御》図です。この図では寝姿ながら目まで描かれています。私のお宝の方は残念ながらまぶたを閉じた目までは描かれていません。

 もう一つ残念なのは画中歌が「袖にさへ秋のゆふべ(は)しられけり消えしあさちが露をかけつつ」であって、寝姿に対応する歌としては「ぬる夢にうつつのうさもわすられておもひなぐさむほどぞはかなき」が想定されています。画中歌とその図像が異なるのはいかにもその芸術性が損なわれてしまいます。

 その一つがいっしょに掲出した『三十六歌仙歌合画帖』の《斎宮女御》図です。これは既に拙著『物語絵・歌仙絵を読む』(武蔵野書院、2014年)に全図が資料として所載されています。その歌は有名な「琴の音に」です。寝姿に「琴の音」では寝られませんし、お宝の掛軸の歌では秋の夕べの感傷がこの図柄では一致しないでしょう。

f:id:kuge-h:20180410163850j:plain三十六歌仙歌合画帖)

 こうした歌仙絵はまず詠歌と一体となった形で評価されなければなりません。そうとすれば、私のお宝は本当の意味でのお宝とは言えません。残念なことですが。