kuge’s diary

源氏物語を研究している久下からのお知らせです。

久下研究室のHP→http://www.ne.jp/asahi/kuge/h/

平成30年度の論文業績について

 平成30年度の論文は上掲した『知の遺産 狭衣物語の新世界』の二本に続き、ようやく三月に集中して発行にこぎつけた昭和女子大学『学苑』のものがあります。1つは11月号の「資料紹介特集号」において「昭和女子大学図書館蔵『狭衣物語』(巻一・巻二)ー解題・書影ー」で、もう1つは1月号「日本文学紀要」における「末摘花の成立とその波紋」です。

 

 前者は三十年以上前になりますが、私が昭和女子大学に勤め始めた頃、まず図書館の貴重図書にどのようなものがあるのかを確認した時に見出したものですが、その時流布本と見切り、書写状態もあまり好ましいものではないと判断し、いつか時間が出来たら詳しく調査しようと思っていたままで、現在に至っています。

 本年度を『狭衣』年間にしようと思って、あくまでついでにその書影を掲載したというのが実状です。

 

 後者は8月に「『源氏物語』成立の真相・序ー紫式部具平親王家初出仕説の波紋ー」につづく論文で、常陸宮家の姫君である末摘花造型に思わぬ批判が具平親王家の旧同僚女房たちから寄せられることになり、帚木系の物語と紫の上系の統合を図ろうとした作者紫式部は、その試みに失敗して、蓬生巻に末摘花を再登場させることになったのだという『源氏物語』の成立に関わる論文です。

 

 また、3月には実践女子大学文芸資料研究所『年報』第38号の「実践女子大学所蔵 物語関係古筆切目録ー伊勢・源氏・狭衣」において、同女子大所蔵の古筆手鑑『筆陣』の『源氏』と『狭衣』関係の切の翻刻・解説を担当しました。中にはそうとう横井氏の筆が入っている部分もありますが、とにかく研究員としての役割の成果となっております。

 

 という次第で、平成30年度は『狭衣』年間ということになりましたし、他の出版物に学習院大の三条西家本の研究成果なども公表されたりして、本当に『狭衣』の年というにふさわしい年度になりました。

 ブログではすでに新しい年度に移った4月中旬も過ぎた頃の記述となりましたが、関係の先生方に抜き刷りを配送し終わってからのブログでの報告となりました。