kuge’s diary

源氏物語を研究している久下からのお知らせです。

久下研究室のHP→http://www.ne.jp/asahi/kuge/h/

私のお宝紹介(8)狭衣物語の古筆切

f:id:kuge-h:20180605163134j:plain

 上掲、左は『平安文学の新研究―物語絵と古筆切を考える』(新典社、平成18〈2006〉年)の「『狭衣物語』の古筆切について―飛鳥井雅章筆本との関連―」執筆のため、その参考資料として口絵にカラーで掲載し、のちに単著である『王朝物語文学の研究』(武蔵野書院、平成2〈2012〉年)に同論考を収蔵するので、同書の口絵にも、伝藤原為家筆『源氏歌集』巣守断簡とともにカラーで掲載した。そこで、これらの古筆切は研究上の役割りを終えたとして、実践女子大学に寄贈することとなった。

 つまり、両書のカラー口絵には久下架蔵とされているが、いまは実践女子大学蔵としなければならない。

 そして、上掲、右の古筆切は左のツレと思われるもので、ここに取り上げたのも、それが一つの理由で、こうなるとやはり少し早く手放しすぎたと後悔している。

 そもそも定年後に論文を書くということは止めようと思っていたので、現在こういう状況で、論文を書いているのは、全く予定外のことなのだ。

 つまり、右の伝為明筆と思われる断簡をわざわざ購入したのも、本年3月に横井孝と共編で出した『宇治十帖の新世界』(武蔵野書院、平成30〈2018〉年)につづけて来年度は『狭衣物語の新世界』を、編者に倉田実・後藤康文両氏をむかえて、出すつもりで、久下も編者として二本の論文を書かねばならないことになっている。その一本のタイトルが「『狭衣物語』の古筆切」なのである。

 そこで何も新しい手持ちの古筆切がないのでは、論文を書くにしても、はなやかさがないし、面白くもないので、潮音堂(京都)から送られてきた新しい目録に右の古筆切が掲載されていたので、やむを得ず購入したという次第なのだ。

 しかも金銀箔の装飾紙とはいえ左の一面とは違ってたった五行の断簡で25万円なのであった。これはいかにも高値で、他の目録に掲載されている古筆切が5~6万であるのに、それほどの値のつく代物とはとても思えないのだが、論文に花を添える意味でも、あれこれ言わず、早速購入したという次第なのである。

 収入のない年金生活者が、つつましやかな生活をしなければならない道理なのに、なんとした無駄遣いをしたことであろうか。